心不全について

心臓は特殊な筋肉(心筋といいます)が絶え間なく収縮、弛緩を繰り返し全身に血液を配っています。心不全とはこの心臓の収縮、弛緩能が低下し各組織に十分な血液を送り出せなくなった状態をいいます。
【正常】 【心不全】
心臓は全体が均等に伸縮し、
力強く動いています。
心臓は下部(後壁)は収縮しておらず、
全体的に機能が落ちています。

 

心不全の症状

心臓のポンプ作用が低下すると
@循環血液量が低下し、各臓器に血液不足が生じる。特に腎臓では血流量が低下するため尿量が減少する。
A循環血液量低下を代償する目的で交感神経系、内分泌系が活性化し水分貯留が生じる。
B心臓は収縮力が低下した代償として次第に肥大、拡張して、量で補おうと試みる。しかし拡張した心臓はさらに収縮力が低下してしまい、貯留した水分は心臓がまかなえる以上に増加し、最終的には血管(静脈系)の内圧は上昇し溢水状態となり、血管の外へ水分がもれ出てしまい、肺や末梢の組織に浮腫を生じる。
このため、労作時の息切れ、夜間の呼吸困難、咳、動悸、足のむくみなどの症状がおこってきます。
従って、急性期には利尿剤を使用して溜まった水分を体外に出してやると症状が軽減します。身体の中には2−3リッターあるいはそれ以上も水が溜まっている場合も決して少なくなく体重もその分増加しています。

心臓のポンプ作用が低下する原因は

心不全の原因は以下のように分類されます。
収縮能が低下する場合
1) 心筋梗塞などの虚血性心臓病 2) 拡張型心筋症 3) 高血圧性心臓病 4) 弁膜症

弛緩能が低下する場合
1) 肥大型心筋症 2) アミロイドーシス 3) 加齢性変化

心拍数の変化による場合
1) 心房細動(徐脈性、頻脈性) 2) PSVT、VT  3) 房室ブロック 4) 洞徐脈

心不全の治療

■急性期
利尿剤を投与し身体に余った水分を体外に排出することが第一に行われます。心臓の力に見合った循環血液量に調節してあげるわけです。全く未治療の場合は驚くほど尿が排出され効果があります。
余分な血液が心臓に帰ってこないように末梢の静脈を拡張させる亜硝酸剤(ニトログリセリンなど)を投与します。血管の中に蓄えられる血液量を増加させて血管の内圧の上昇を抑えることが狙いです。(前負荷の軽減といいます)。
また、心臓の収縮力の抵抗になる血圧を低下させる治療もおこないます。(後負荷の軽減といいます)もちろん、血圧が低下しているショック状態のときには行いません。
いわゆる強心剤は心収縮力を増強するためまず最初に投与するべき薬ではないかと想像されます。心臓のポンプ機能を改善させることにより血液の循環がよくなるからです。実際つい10年ほど前までは頻繁に使用されていました。しかし、最近は強力な心臓収縮力増強剤(カテコールアミン)はあまり使われなくなってきました。カテコールアミンは毒性があり、長い目でみれば収縮力改善作用よりも悪化作用の方が問題になってくるからです。弱った馬車馬に鞭をいれても一時的に元気が出るだけで結果的には早く消耗して走れなくなる状況によくたとえられます。

弱った馬車馬にむちを入れる
えさを十分に与えゆっくり歩かす
現在は投与するにしても必要最小限に留めています。
逆に、心保護作用や腎臓保護作用のある心房利尿ホルモンなどが使われるようになっています。劇的な効果はありませんがじわじわと臓器を保護しながら良い方向に持っていくことのできることがわかってきたからです。

■慢性期

あふれ出た水分をどうにか処理できた後、残された心機能をいかに温存するかを考え治療を行います。基本的には急性期の治療と同様な考え方で投薬しています。

1)ACE阻害剤/ アンギオテンシンII受容体拮抗剤
心不全治療には必須の薬で、大規模臨床試験でも死亡率や心不全発症率に効果ありと証明されています。血管拡張作用があるのに加えて、交感神経刺激作用や心筋肥大作用、繊維化促進作用など心臓にとって悪影響のある作用を抑制する効果をもっています。この薬の登場で心不全の予後が驚くほど改善されました。血圧の低下やカリウムの増加、腎機能の見かけの悪化が問題になりますが、可能な限り高容量の投与が望まれます。

2) β遮断剤
β遮断剤は以前は心不全には禁忌として絶対に投与してはいけない薬に分類されていました。しかし、ごく少量から徐々に濃度をあげて投与すれば、心機能が最終的には劇的に改善する効果があります。交感神経の緊張を軽減し、頻脈を抑え、心筋の収縮指令に対する感受性を回復する効果があります。投与中に心不全が悪化するケースもありますので投与は慎重に行う必要があります。

3) 利尿剤
急性期治療の同様、循環血液量が過剰にならないように調節します。しかし、高齢者においてはなかなか投与量の調節が難しい薬剤です。高齢者は循環血液量の調節の幅が狭く、若い方々と同じような感覚で利尿剤を投与すると容易に脱水状態に陥ります。過度な血圧の低下や腎機能の悪化を招く危険性がありますので、こまめな投与量の調節が必要になてきます。

4) 運動療法
慢性心不全の状態でも運動することは予後を改善することが知られています。運動により筋肉での酸素の取り込み能や自律神経系の調節能力もアップし、運動対容能が増加します。また、虚血心筋に対して側副血行路の発達を促し狭心症症状の改善も期待できます。統計的にも5年生存率の上昇が示されています。但し、適度な運動量であることが重要で、無理な運動はかえって悪影響が生じますので医師の指示の基で行うことが大切です。



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